9月ハナアブしらべの報告

 前回の8月のハナアブしらべは天候不順により中止となりましたが、定期的にご参加いただいた小学生の功績が認められ、キョロロで新聞記者2名の方に取材をしていただく場となりました。   

 そして今回は良い天気に恵まれました。去年9月は種数最多となったため、期待が高まります。7月には大量に飛んでいたオニヤンマはほぼ姿を消し、前回エゾハルゼミが鳴いていましたが、今回はチッチゼミが少し鳴いている程度でした。そして奇妙なことに、ミカドフキバッタのハエカビに侵された死骸が驚くほど見つかりました。この菌に感染したバッタは体を支配され、バッタの体内で作った胞子をより遠くに飛ばすため、バッタが死ぬ前に草の高いところまで登らせると言われています。下の写真は死後変色して緑色が茶色味を帯び、胞子が出きって腹部の先端が欠けています。

 そんな季節の移り変わりを感じさせる環境でしたが、ハナアブ採集もなかなかの成果となりました。去年同様に、今月は今年最多の種数となり、13種23個体が採集されました。そのうち2種は十日町市未記録の種でした。これで松之山で確認した種数は合計86種となります。

①アイノオビヒラタアブ1♀

②キョウコシマハナアブ3♂1♀

③アシブトハナアブ1♂

④シバカワオビヒラタアブ3♀(十日町市未記録)

⑤ホソヒラタアブ1♂2♀

⑥マガイヒラタアブ1♀

⑦タカネムツモンホソヒラタアブ2♂2♀

⑧シロスジベッコウハナアブ1♀

⑨オオハナアブ1♂

⑩キアシマメヒラタアブ1♂

⑪キスネクロハナアブ1♂

⑫オビホソヒラタアブ1♀

⑬ホソオビヒラタアブ1♂(十日町市未記録)

 今回得られた十日町市未記録種はKR君とHT君が採集した④シバカワオビヒラタアブでした。似た種と区別するには頭部の毛や翅の微毛の状態などを顕微鏡で確認する必要があります。もう一種は研究員が採集したホソオビヒラタアブでした。こちらも似た種がいますが、同じように顕微鏡で複眼や翅の微毛などを見なければなりません。OM君が採集した⑫オビホソヒラタアブは、ハナアブしらべでは初めて採れた種です。⑧シロスジベッコウハナアブはあの新種の可能性の高いハナアブによく似ていますが、なかなかそちらの方は姿を現してくれません。また、研究員が採集した⑦タカネムツモンホソヒラタアブは模様に異常がありました。模様は通常左右対称ですが、この個体では黄色い模様が右側にしかない部分があります。このような斑紋異常は初めて見ました。

 続いて、ハナアブではありませんが、大きな発見がありました。KR君が採集したメバエ科のハエ、ジョウザンメバエは新潟県未記録の種であるようです。メバエ科の仲間は特殊な生態を持ち、花に来るハチの体内に卵を産み付ける寄生バエであることが知られています。そのため花の上で見られることが多いグループです。しかし、この種の国内での寄生相手はまだわかっていないようです。

 次回は10月15日(土)13:30から大厳寺高原で行います。今回よりも昆虫が全般的に減っているとは思いますが、そのような環境でどのようなハナアブが見られるか気になるところです。次回も皆様のご参加お待ちしております。今回は5名の方に、時には取り合いが起こるほど一生懸命採集していただきました。ありがとうございました!

 

 

Comments are closed.