Archive for 11月, 2021

11月ハナアブしらべ活動報告

日曜日, 11月 14th, 2021

11月13日のハナアブしらべは冬間近な雰囲気の中行われました。採れるハナアブも非常に少ないと予告していたにも関わらず、6名の方々に参加していただきました。天気は晴れ時々曇りという好条件でしたが、採れたハナアブは安定のホソヒラタアブ1種のみでした!合計8個体(3♂5♀)が採集されました。松之山では早ければ3月から見ることのできるハナアブで、稀に真冬の晴れた日に見ることすらあります。複眼が中央でくっついているのがオス、離れているのがメスで、これはハナアブ科でほぼ共通の特徴で、ハエ目の他のグループでよく見られる特徴でもあります。

この時期に咲いている花は非常に少なく、虫を集める花は北米からの外来種セイタカアワダチソウのみで、ホソヒラタアブもその周辺からのみ採集されました。外来種というと響きが悪いですが、花を必要とする昆虫にとっては冬前の貴重なエサ資源となっています。

ハナアブがこれ以上採れる見込みがあまりなかったため、調査を早めに切り上げました。空いた時間で標本作成と11月1~13日の間仕掛けたマレーズトラップの成果を確認して、その中からハナアブのみを参加者に引き抜いてもらいました。なんとこちらもホソヒラタアブのみで、合計11個体(4♂7♀)が確認されました。春から暖かい時期に比べると収量が少ないですが、下の写真の黒い点々は全て虫です。

マレーズトラップ(下写真左)はその下の図の通り虫が壁に当たると上へ上へと歩いたり飛んだりする習性を利用して、最終的に虫を一か所集めて採集する方法です。下写真右の黒い液体が入った容器は、虫の多い春に約1週間仕掛けた結果です。仕掛けた時は透明ですが、大量の虫で真っ黒になってしまうのです。時間あたりで換算すると虫網で採る方が圧倒的に効率は良いですが、何もせずトラップを放置しておくだけで虫が採れるというのは大きな強みです。

また、ハナアブ以外のハエ目(主にガガンボ類)も採っていただきました。実は去年のこの時期に非常に変わった新種の可能性大のガガンボダマシ科がキョロロ館内にいるのを発見していたので、皆さんにも探していただきました。去年採集できたのは1♀のみと珍しいようで、残念ながらそのガガンボダマシは今回採れませんでした。しかし、その他のガガンボダマシや他のハエ目のグループは非常に多く飛んでいました。下の写真が採集していただいたハエ目です。

ガガンボダマシ科は晩秋から春までの寒い時期のみに成虫が発生するグループで、私が研究するガガンボ上科とは異なる親戚のグループです。今の時期にやや大きめ蚊柱のようなものが群れて上下にパラパラと飛んでいれば、それはほぼガガンボダマシと言っていいでしょう。ガガンボダマシ科とガガンボ上科はよく似ていますが、頭部を見ると違いが顕著で(肉眼では厳しいですが!)、単眼があって触角が糸状なのがガガンボダマシ科、単眼がなく触角が数珠状なのがガガンボ上科になります。この違いを知っていたら虫好きの人の中でもかなりレアな人材でしょう!

また話が脱線してしまいましたが、今回のハナアブ調べではホソヒラタアブ1種のみと、秋から冬への移り変わりを感じさせる回でした。また、寒い時期でもまだ活動し続けるホソヒラタアブのたくましさも知れたかと思います。そして今年度のハナアブしらべはこれで終わりとなります。これまで参加してくださった皆様、人気とは言えないマイナー昆虫の調査にもかかわらず本当にありがとうございました!去年度からの調査結果はキョロロの研究紀要で発表する予定です。去年度で38種だったものが、お陰様で今年度ではなんと79種となりました!来年度は調査場所を変えて、まだ見ぬハナアブがいるであろう大厳寺高原で実施しようと思っております。興味がある方はぜひご参加ください。

笑顔?の面を持つカメムシ

木曜日, 11月 11th, 2021

 

背中に大きな人の笑顔のような模様があるカメムシをご存じでしょうか?このように白と黒の模様で、白い顔をした人が大きな口を開けて笑っているように見えます。この模様には個体差があり、写真は松之山住民の方が発見した2個体ですが、よく見ると全く違う”表情”をしています。

 目・口の形、鼻の有無、アゴの先端あたりの模様、腹部の大きさに特に違いがあり、右の個体はより人の顔に見えますね(あの有名なホラー映画で存在感のある、白い子供の霊にも見えてしまいます!)。ネット上にある多数の写真を見てみると、ほとんどの場合この口の中に白い点が数個あり、鼻の輪郭となるような黒い筋が入る例は少ないようです。幼虫の模様の意味については詳しくわかっていないようですが、白と黒でツヤがあり、鳥の糞に擬態して外敵から身を守っているのではないかという説もあります。

 さて、このカメムシの正体を明かしていませんでしたが、これはアカスジキンカメムシの終齢幼虫です。自然豊かな野山だけでなく、住宅地のちょっとした林・家庭菜園などでも見られる、決して珍しくはないカメムシです。この時期になると集団で落ち葉の中や樹皮の隙間などで越冬します。たくさんの個体が見つかれば、個体それぞれの個性的な“顔”を観察するのも面白いかもしれません。ちなみに成虫は全く違う模様で、緑に赤の独特な模様があり、「歩く宝石」と言われるほど綺麗です。キョロロのZoomuseeで成虫・幼虫の超拡大写真が見れますので是非見てみてください。

 

アカスジキンカメムシ(学名:Poecilocoris lewisi (Distant, 1883)

分類:カメムシ目キンカメムシ科

分布:本州・四国・九州、台湾、中国

エサ:様々な落葉広葉樹(コナラ・ミズキ・フジなど)・常緑広葉樹(アオキ・ツバキなど)、針葉樹(スギ・ヒノキなど)の葉・枝・果実から吸汁

その他:羽化直後の成虫は黄色い。稀に緑ではなく黒い個体が現れるが、水に濡らすと緑に戻るという情報も。

【紅葉情報】紅葉の美しい時期を迎える美人林

火曜日, 11月 9th, 2021

【紅葉情報】美人林のブナの紅葉が美しい時期を迎えてます。
地面にはたくさんのブナの落ち葉が敷き詰められています。
カサカサと音を楽しみながら散策するのも楽しい季節です。

雨上がりのブナ林は色が鮮やかです。濡れた紅葉、樹皮、落ち葉の色が引き立っています。
林冠部は落葉がぼちぼち目立ち始めたものの、林内では黄色く色付いたブナの紅葉が広がっています。

昨日の強風の影響で、林内にはまだ緑色の葉も落葉しています。
足元がなんともカラフルです!

例年に比べ美人林の池の水位はだいぶ浅いものの、池にもカラフルな落ち葉が水面を覆っています。
紅葉の時期ならではの光景です。

キョロロでは秋冬企画展「美人林ものがたり~里山の美しきブナの森の秘密~」を好評開催中です。
美人林へのご来訪と合わせて、ぜひご覧ください。