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【市民参加型生物調査】1月の雪虫しらべのご報告

火曜日, 1月 21st, 2025

本格的に雪の季節となった1月のキョロロの森で毎年恒例の雪虫しらべを開催しました。今回の雪虫しらべはいつもとちょっと視点を変えて、雪の「上」の虫ではなく雪の「下」の虫にどんな虫がいるのかを調べてみました。

既に2m30cm以上積雪があるキョロロの森。斜面の雪の切れ目や木の生え際などの積雪深の浅い場所を狙って雪を掘り、雪の下の落ち葉や土の中の生き物を探してみました。


雪の下にある落葉をバットの上に広げて虫探し。寒いと虫たちもあまり動かないので観察力が試されます。


雪に埋まった樹木の幹には奇妙な粒々も。最初は粘菌かな?と思い採集すると、これらは全て越冬中のダニでした(ササラダニ亜目マルココバネ科エビスダニ)。


採集できた虫の中にはなが~~いムカデも。眼を持たないジムカデの仲間でした。

【結果】
今回の雪虫しらべでは合計で8目17科19種の生き物を見つけることができました。

記号の意味 〇:雪上で頻繁に確認, △: 雪上で稀に確認(積雪量が少ない場合や暖かい日などに限る), ×: 雪上で未確認

ダニ目
1.アギトダニ科の一種△
2.エビスダニ×
 (※ダニ類の分類体系は現在大きく変化していますが、ここでは日本産土壌動物第二版に従った体系で表記しています)

クモ目
3.カントウヒゲヌカグモ×

4.コガネグモ科の一種△
5.ワカバグモ△
6.ニッポンオチバカニグモ×

イシムカデ目
7.イシムカデ属の一種△
8.ヒトフシムカデ属の一種×
9.イッスンムカデ属の一種△

ジムカデ目
10.エスカリジムカデ属の一種×

オビヤスデ目
11.モトオビヤスデ属の一種×

ワラジムシ目
12.二ホンヒメフナムシ×

トビムシ目
13.サヤツメトビムシ (ただし雪上付近で採集)〇
14.イシバシトゲトビムシ△
15.チャマダラマルトビ△

カメムシ目
16.イナズマヒメヨコバイ×
17.ツマグロオオヨコバイ△
18.ヒメクビナガカメムシ×

コウチュウ目
19.ハネカクシ科の一種△

上記の結果から、1月の積雪下の土壌中には雪上に出現する虫はほとんど含まれていないことが分かりました。この時期の雪上ではクロユキノミやコシジマルトビムシ、サヤツメトビムシ、ユスリカ類、ガガンボダマシ類が確認できますが、こうした雪虫たちは積雪下の土壌中からはほとんど見つけることができませんでした。

雪上の雪虫たちは樹木の幹などを通じて積雪下の土壌と行き来しているといわれていますが、今回の調査では積雪の少ない時期や暖かい日にだけ確認できる種だけしか積雪かの土壌中から確認できませんでした。一方でクロユキノミなどのトビムシ目は冬の始まりには土壌中から、雪が積もってからは雪から突き出ている樹木の幹の周辺でよく確認できます。今回の結果と考え合わせると、これら雪虫は一度雪上に現れたらあまり土壌中には戻らず春になるまで雪上(あるいは積雪の上層)で生活しているのかもしれません。

今回はごく一部の土壌を一度だけ調べただけの調査ですので、上記の仮説はまだ至らないことも多いですが、2月、3月にも同様に積雪下の土壌中の節足動物を調べてみたいと思います。

次回の雪虫しらべは2月15日(2月第三土曜日)です。雪を掘っても虫探しをしてみたい方のご参加をお待ちしています!