5月24日(日)春季企画展関連イベントとして「学芸員と歩く!美人林の秘密めぐり」を開催しました。
定員を増員するほど多くの皆さんからご参加いただき、里山を代表するブナ二次林「美人林」を会場に、美人林の成立の背景、多雪地域ならではのブナ林の特徴や生物多様性、人々の暮らしとの関わりをご紹介しました。
※春季企画展「棚田とブナ林-地すべりと豪雪に生きる-」開催中です(会期:2026/7/12まで)!

▲「学芸員と歩く!美人林の秘密めぐり」
美人林はブナの原生林ではなく、今から100年ほど前の大正末期に炭焼きのために伐採され、その後再生した二次林と呼ばれるタイプの森林です。
ブナが高密度で再生してきたため、枝ぶりが広がらず、電柱のような通直な樹形となり、この姿が美しいということから「美人林」と名付けられました。
美人林の成立には里山の人の営みが深く関係しています。

▲初夏の美人林(2026.5.24)
今年の春間伐されたブナの年輪を観察してみました。
この個体が若い頃(数十年前)の年輪と近年の年輪幅を比べてみると、近年は判読が難しいほど年輪が細かく、ほとんど幹が太ることができていません。
これは、美人林に生えるブナの密度が高く、過密状態となりブナが葉を豊富につけることができず、肥大成長が停滞していることを示しています。
細いブナが高密度で生える美人林の特徴的な景観は、見方を変えると過密状態でブナの成長が停滞している側面もあります。

▲美人林のブナの年輪の観察
美人林の中央にある池は明治末期に谷にダムをつくり、農業用水のため池として作られた人造の池です。
しかもこの水を棚田に引くために、美人林の地下には手掘りのトンネルがあります。
この地域の棚田は天水に依存する箇所も多く、棚田の上部にはため池があり、その周辺に水源林としてブナ林がある景観が特徴的です。
雪解け水・雨水とブナ林・棚田とのつながりを解説しました。

▲美人林のため池の解説
ブナの幹を眺めると白い斑点模様があります。
これは「地衣類」という生き物。しかも菌類と藻類という別の生物が共生関係を結んでできた複合体です。
よく見ると、地衣類には何かが削って食べ進んだような筋状の痕があります。その正体は……?

▲美人林のブナの幹に付着する地衣類
ブナ林の植物も観察しました。
「イワガラミ」は名前の通り絡みついて岩などに這いのぼるツル植物です。
葉や茎に「夏のある野菜」に似た特徴的な香りがあります。香りを嗅いで参加者の皆さんと答え合わせをしたところ、23名全員の答えが一致しました!
イワガラミ以外にも、「オオバクロモジ」の香りも楽しみました。

▲イワガラミ(ブナ林に生育する落葉ツル植物)
足元にはブナの落葉がたくさんあります。
参加者の皆さんと足元に落ちているブナの落ち葉を探し、美人林と東京周辺のブナを比べながら、葉の大きさや生理的な特徴の違いを観察しました。

▲参加者各々が探した大きなブナの葉
ブナ林を歩くと足元はふかふかしています。
ブナ林の土壌を観察し、落ち葉の分解や足元の土壌動物の特徴を解説し、ブナ林の水源涵養機能について考えました。

▲ブナ林の落葉層の観察
ふかふかの落葉層を観察した後、美人林の入り口付近で改めて、土壌を観察してみました。
落葉は粉砕され、ブナの根が露出しています。
現在、美人林は気軽にブナ林を楽しめる場所として、年間10万人もの方が訪れる新潟県を代表する観光地となっています。
一方で、観光利用やオーバーツーリズムによる踏圧など、里山のブナ林ならではの課題もあります。
最後は、美人林を「利用すること」と「守ること」の両立について、参加者の皆さんと考えながらイベントを締めくくりました。

▲根が露出し、踏圧で地面が固くなっている美人林の入り口付近。
雨の後ということもあり、幹を流れ下る雨の道「樹幹流」も観察できました。
初夏のすがすがしい空気の中、美人林のさまざまな秘密を参加者の皆さんと一緒に楽しむ一日となりました!