【開催報告】第16回つまり市民里山学会(2026.8.29開催)
月曜日, 8月 31st, 20268月29日(土)に「第16回つまり市民里山学会」を十日町情報館を会場に開催しました。
十日町市と津南町からなる越後妻有(つまり)地域の里山の自然に関する多彩な研究や活動に関する5つの発表が行われました。
たくさんの皆さまからご参加いただき、大変ありがとうござました!
発表1:「生物分布記録情報のハブとしての博物館」坂上翼(「森の学校」キョロロ)
2025年の「発明工夫模型展・生物標本展」に出品された小学生の昆虫標本から、十日町市では長らく記録が途絶えていたトンボ「カトリヤンマ」が確認された事例を紹介しました。採集した小学生、標本を見てカトリヤンマではないかと気づいた市民、そして情報を確認・蓄積する博物館。それぞれの「眼」がつながることで、新たな発見が生まれました。日頃の自然観察や自由研究、市民参加型調査などの記録を集め、たどり、未来へ残していく、地域の生物分布情報の「ハブ」としての博物館の役割を紹介しました。講演ではキョロロに持ち込まれた外来種・新分布情報などの事例も紹介していただきました。

発表2:「生息域拡大中!外来蝶アカボシゴマダラ 栄村・津南町十日町市で確認」涌井泰二(津南町自然に親しむ会/元栄村希少動植物調査員)
特定外来生物「アカボシゴマダラ」について、近年の急速な分布拡大と、栄村・津南町・十日町市での最新の確認状況が報告されました。2025年には栄村で多数の目撃情報と越冬幼虫が確認され、津南町でも初記録。2026年には栄村で越冬成功や春型が確認されたほか、十日町市松之山でも春型が採集されました。 温暖化による越冬条件の変化も含め、地域の自然環境の変化を継続的に記録していく重要性を考える発表となりました。

発表3:「高校ボランティアと協働した市指定天然記念物「鶴沼池」の環境整備活動」小海雅秀※(里山わらび)・十日町高校生物部 ※発表者
発表者である小海さんは、十日町市吉田地区の名ヶ山集落を舞台に、小中学生や地域住民が自然体験や稲作、生き物観察などを通じて学ぶ活動団体「里山笑躾(さとやまわらび)」の代表をされています。今回は市指定天然記念物「鶴沼池」の環境整備について、十日町高校生物部の皆さんと協働して進めてきた活動をご紹介いただきました。水深が浅くなり、陸地化が進む池の環境の変化の把握と共に、市内の高校生と共に環境整備、絶滅危惧種の保護活動、外来種の駆除活動を実施した記録を、映像を元にご紹介いただきました。

発表4:「野鳥こけしの継承と新たな取り組み」福原なつき(十一屋商店)
1962年に誕生し、松之山のお母さんたちの手仕事によって受け継がれてきた「野鳥こけし」。その誕生の背景や制作工程、現在直面している担い手不足について紹介されました。最盛期には年間約2万5千羽が販売され、約60人が制作に携わっていましたが、現在は工程によって担い手がわずかとなるなど、継承は危機的な状況にあります。 そこで、地域の学校や博物館などと連携した制作体験会の開催や、全24種類の制作方法の記録など、「作る・伝える・残す」ための新たな取り組みが紹介されました。

発表5:「伝説の名刀「蛇切丸」は実在した!? 伝説のふるさと松之山で収蔵へ」福原諭祐(大棟山美術博物館)
松之山・松代・栄村にまたがる三つの池の大蛇の戦いに登場する名刀「蛇切丸」。その名で伝承されてきた実物の刀が、持ち主の離村から約100年を経て松之山へ里帰りし、大棟山美術博物館に収蔵された経緯が紹介されました。 複数の文献や伝説の舞台となった池、龍摺石などをたどりながら、龍の伝説に洪水や土石流といった「水との闘い」の記憶が重ねられている可能性についても紹介。 来年度以降、蛇切丸を公開する特別展も予定されており、新たな地域の記憶や資料の発見にも期待が寄せられました。

つまり市民里山学会は、市民の皆さんの活動について発表する場を設けることで、お互いに学び、交流を深め、それぞれの活動をより充実させていくことを目的としています。今回は、①「記録する自然」、②「変化する自然」、③「守る地域資源」、④「受け継ぐ文化」、⑤「伝承を掘り起こす」と、自然科学から地域文化まで幅広いテーマがそろいました。
地域を調べる人、守る人、伝える人がつながり、地域の自然や文化の価値を一緒に見つけていく。つまり市民里山学会が、これからもそんな場であり続けられることを期待します。










