松之山では渋海川とその周辺の平地の水田よりも、斜面に分布する水田の面積が圧倒的に広いのです。
俳句などによく詠まれる「田ごとの月」という独特の地形です。
水田化しにくいと考えられる丘陵の斜面が、なぜこのように水田化されたのでしょうか。
それは「地すべり」という現象によって引き起こされた結果と考えられています。
東頸城丘陵の地域は、実は日本でも有数の地すべり地帯であって、丘陵の斜面に分布する水田は、古い地すべり地を利用してつくられています。
地すべり発生の条件
・地層又は堆積物が褶曲や断層によって粘土化されていて水を含みやすくなっている。
・多量の降雨や多雪地帯の融雪水によって地下水面が上昇している。
・厚い風化帯の下底に水を含み、その部分が粘土化し、すべりやすくなっている。
・河川の侵食が激しく、河岸に急な崖をつくっている。
松之山における地すべりは第三紀層地すべりです。
第三紀層は礫岩、砂岩や泥岩などからなりますが、時には薄い層が交互に重なってそれらの岩層が互層をなしていることもあります。これらの地層の多くは軟らかく、ハンマーでたたくと簡単に崩せるほどです。
しかもこれらの地層は厚く堆積していることが多いのです。さらに粒子が細かく、水を含みやすい性質をもち、風化しやすく、また、断層や褶曲で地層がもろくなりやすいのです。
このような地層が雪解けや集中豪雨の時などに大量の水を吸収し、粘土化した層を境として地すべりを引き起こすのです。
この第三紀層地すべりは、一般的には非常にゆっくりとした速度で移動します(慢性地すべり)。
松之山を囲む自然は、第三紀層丘陵地帯を形成しています。
もしこの地すべりによる地ならしがなかったら、丘陵の斜面は急傾斜であるため人間の生活は不可能で、松之山はこの地に誕生しなかったのではないでしょうか。言い換えれば、地すべりは自然のブルドーザといえるでしょう。
地すべりによってできた傾斜面凹地は農耕作業がしやすく、そのうえ地すべり土壌は粒子の細かい粘土が多く、水もちがよく肥料分もよく蓄える良質の土なのです。
更には地すべりのため土壌がよくかき混ぜられていて下から新しい土が出てきているため、耕地として非常に適した土となっています。
このように耕地として最適な土地を与えてくれたのが地すべりという自然現象なのです。
一方で、集水井戸工法、杭打ち工法などにより地すべり災害の防止にも努めています。