Archive for the '①生き物だより' Category

【カエルの鳴き声が響く】5月の夜の里山探検の報告

火曜日, 5月 23rd, 2023

5/20(土)に夜間の里山で活動する生き物を観察する、「夜の里山探検」を開催しました。水辺の生き物を懐中電灯で探したり、ライトトラップで夜行性の昆虫を集めたりして、その行動を観察しました。

この時期は日が沈むと途端にカエルの鳴き声が響き始めます。キョロロの田んぼやため池ではトノサマガエルやツチガエルなどの様々なカエルの合唱が聞こえました。特にアマガエルの大合唱はこちらの声が聞こえなくなるほどの大音響でした。森の中の池ではモリアオガエルの鳴き声も聞こえました。残念ながら産卵の様子は観察できませんでしたが、近日中に卵塊が木の枝の上で見られるようになるのではないでしょうか。その他にもトノサマガエルやモリアオガエル、オオコオイムシ、ミズカマキリ、ガムシなどが夜の水辺でじっとしている様子を観察できました。昼間と違ってほとんど逃げないため、素手でそうした生き物を捕まえることもできました。


田んぼの中にはトノサマガエルやモリアオガエルが見つかりました。近づいても逃げないか、逃げてもすぐに岸辺に戻ってきます。カエルの夜間視力は人間よりもずっと良いので私たちが見えていないということは無いはずなのですが、どうして昼と夜でこんなにも行動に差が出るのでしょうか。


枯葉が積もった水溜りにはヤマアカガエルやニホンアカガエルカエルが隠れていることもあります。これらのカエルも昼間よりも夜間の方がずっと簡単に捕まえられます。


今回の夜の里山探検ではライトトラップのシステムを大幅に変更。多少の雨でも設置できるように、タープテントを利用したライトトラップにしてみました。水銀灯の光を当てた白布には多数のモンカゲロウの仲間(モンカゲロウやトウヨウモンカゲロウ)が集まった他、甲虫の一種であるジョウカイボンや様々なガ、ガガンボなどの多数の昆虫が観察できました。


白布だけでなくテントの屋根の内側にも多数の昆虫が集まりました。興味深いことに白布とテントの屋根でそれぞれ集まっている昆虫が微妙に異なっていました。

次回の夜の里山探検は6/3(土)に開催します。当日は現在行っている企画展と関連した特別イベント「舘野鴻さんトークショー&観察会」も開催いたします。どちらもまだ定員に達していませんので是非ご予約下さい。

【命名!みんなのワクワクビオトープ】水辺ビオトープづくり:里山の生き物サポーターズ①

月曜日, 5月 15th, 2023

「里山の生き物サポーターズ」は里山管理活動と連動した市民参加型生物多様性保全活動です。里山の田んぼ、ため池、森、草地をフィールドにした里山管理活動を通して、みんなで楽しく生き物が暮らしやすい環境の創出や維持を目指しています。
「水辺ビオトープづくり」では、昨年から耕作放棄されていた田んぼ跡を水辺に戻し、いろいろな生き物が暮らし、観察できる環境づくりを目指しています。
作業はスコップで田んぼ跡の地面を掘り下げ、水がたまったり流れたりする環境を作ります。4月は昨年みんなで作った水辺ビオトープを拡張しました。


何年も放置されてきた田んぼ跡には大きく成長したススキの株がたくさんあり、掘り出し除去するのはなかなかの力仕事。
参加者の皆さんとは「こんな水辺をつくってみたらどうだろう」「こんな生き物が集まってきたらいいな」と、この小さな自然再生の目指したい将来像を共有しながら、活動を継続していきました。
そして活動2年目となったこの春、このビオトープではうれしいニュースがありました。
小さいながらも水辺が再生されたことで、「ニホンアカガエル」「クロサンショウウオ」といった両生類の産卵が確認されたのです!
継続して活動に参加されている皆さんにとっても、とてもうれしい出来事となりました。

▲ニホンアカガエル

▲初確認されたニホンアカガエルの卵塊

カエル以外にも、オニヤンマのヤゴ、コオイムシといった水生昆虫も見られ、観察できる生き物の種類や数が増えてきています。
また掘り起こした土の中で眠っていたスミレのタネが発芽し、植物も含めた生物多様性の再生につながってきています。
「生き物を守りたい」という一人一人の願いと行動が、少しずつ効果を伴ってきている、そんな実感につながったうれしい出来事でした。

今回の活動では参加した子ども達と一緒にこのビオトープの名前も考えました。
ついた名前は「みんなのワクワクビオトープ」。みんなで作り、そこにいろんな生き物が集まり、ワクワクする観察が出来る、そんな願いが込められています。
「里山の生き物サポーターズ」では、一歩一歩、今年も様々なフィールドで小さな自然再生をみんなで楽しく継続していきます。
里山に関わる一人一人の行動が、里山の持続的な暮らしと生物多様性のつながりの実感に結び付き、里山の生物多様性の保全やその達成に向けた教育資源となることを期待しています。

【市民参加型生き物調査】カニムシしらべ【第1回報告】

日曜日, 5月 14th, 2023

本日は市民参加型生き物調査「カニムシしらべ」を初開催しました。定員いっぱい10名の皆さんにご参加いただき、ありがとうございました。カニムシはクモやサソリの仲間(鋏角類)です。体長は1~5mmほどと小さく、ハサミ状の触肢が特徴です。様々な環境に生息していますが、土のなかに暮らしている種類が多いかと思います。そんな小さくて地味なムシを狙って探すイベントは、日本中探してもなかなか見つからないでしょう。

「カニムシしらべ」では、土のなかに暮らすカニムシを調べます。園芸用ふるい、細筆、白いバット、小ビン、軍手があればカニムシを採集できます。最初に採り方をレクチャーした後、皆さんにそれぞれ探してもらいました。

落ち葉や土をふるいにかけて、白いバットのうえに色々な生き物をふるい落とします。葉っぱや土のカケラが混ざった中から、カニムシを探します。

カニムシが落ちていないか、目をこらして探しています。技術だけではなく、続ける根気や運も試される、地味で地道な採集です。

結果は、4種(計35個体)のカニムシがとれました!
・ヤマトツチカニムシ
・ニホンカブトツチカニムシ
・チビコケカニムシ属の未記載種
・モリヤドリカニムシ
(正確に名前を調べるにはプレパラート標本にする必要があるため、暫定的な結果です)

今回は2ヶ所で採集しましたが、砂利道沿いでは1種のみ(チビコケカニムシ属の未記載種)、ブナ林のなかでは全4種が採集されました。環境が変わると、採れる種類も変わってきます。


ヤマトツチカニムシ Allochthonius shintoisticus(オウギツチカニムシ科)


ニホンカブトツチカニムシ Mundochthoniusjaponicus‘(ツチカニムシ科)


チビコケカニムシ属の未記載種 Microbisium sp.(コケカニムシ科)


モリヤドリカニムシ Allochernes japonicus(ヤドリカニムシ科)

今回採れたカニムシの写真を載せてみましたが、違いが判るでしょうか…?みんな同じように見えるかもしれませんが、すべて別の科に属する全然違うカニムシたちです。
こんな地味な方法で地味なムシを採る「カニムシさがし」、また皆さんのご参加をお待ちしております!