元キョロロ研究員の加藤です。5月25日に国際博物館の日記念事業として、去年新種として記載されたキョロロの名の付くガガンボ「キョロロコケヒメガガンボ」を探すというイベントが開催されました。記載論文にある3例のみの記録はいずれもオスで、5月中旬に採集されているため、本イベントの開催日がこの日となりました。また、ガガンボを含む多くの昆虫では、オスよりやや遅れてメスが成虫となるため、まだ記録・記載されていない本種のメスが採集できないかと期待していました。しかし、本種は個体数が少ない珍しい種である可能性もあり、このイベント中で見つけるのは難しいとも考えていました。というのも、2021年にキョロロの森に仕掛けた昆虫採集トラップで、同属のウスモンコケヒメガガンボが119個体採集されたのに対し、キョロロコケヒメガガンボはたったの1個体しか採集されていないことや、これまでの全国調査のなかで新潟県内でしか見つかっていないからです。そのため、見つかったらラッキーという気持ちでイベントに臨みました。
参加者の皆様には一生懸命探していただきましたが、残念ながらキョロロコケヒメガガンボは見つからず。しかし、その他のガガンボは多く採集され、なんと今回だけでも以下の3科29種が確認されました(当時肉眼で大雑把に分けた種数より増えております)。惜しいことに、キョロロコケヒメガガンボと同属のウスモンコケヒメガガンボは1個体のみ採取されました。また、2021年に仕掛けたトラップでキョロロコケヒメガガンボと同期間に採集された31種のガガンボのうち、発生期間が短くキョロロの森では個体数の多い種(Nippolimnophila perproductaやPrionolabis acutistylusなど)が全く見られず、今回得られたウスモンコケヒメガガンボは死骸でした。このことから、今年のキョロロの森のガガンボの発生が例年より少し早く、キョロロコケヒメガガンボの発生も終わっていた可能性も考えられました。生物は年によって発生の時期がずれたり、個体数が増減したりするため、そもそも個体数が少ない種を予備調査なしで狙うというのはやはり難しいですね。そんななかなか出会えないキョロロコケヒメガガンボですが、今後も調査を続けていきたいと思います。ご参加いただいた皆さまに感謝申し上げます。
↑写真背景の1目盛りは1mmです。
オビヒメガガンボ科
1. Dicranota (Rhaphidolabis) sp. (?consors)
2. Nipponomyia pentacantha Alexander, 1958
ヒメガガンボ科
3. Dactylolabis (Dactylolabis) diluta Alexander, 1922 ウスモンコケヒメガガンボ
4. Epiphragma (Epiphragma) subinsigne Alexander, 1920
5. Limnophila (Limnophila) japonica (Staeger, 1840) カスリヒメガガンボ
6. Pilaria melanota Alexander, 1922
7. Pseudolimnophila (Pseudolimnophila) inconcussa (Alexander, 1913) ホソヒメガガンボ
8. Erioptera (Erioptera) cervula Savchenko, 1972
9. Gonomyia (Gonomyia) sp.
10. Idiocera (Idiocera) teranishii (Alexander, 1921)
11. Ilisia incongruens (Alexander, 1913)
12. Molophilus (Molophilus) sp. 1 (?pegasus)
13. Molophilus (Molophilus) sp. 2 (?trifilatus)
14. Styringomyia sp.(未採取)
15. Antocha (Proantocha) brevistyla Alexander, 1924
16. Dicranomyia (Dicranomyia) longipennis (Schummel, 1829) ホソバネヒメガガンボ
17. Dicranomyia (Dicranomyia) takeuchii Alexander, 1922 タケウチマダラヒメガガンボ
18. Dicranomyia (Melanolimonia) paramorio Alexander, 1926
19. Dicranomyia (Sivalimnobia) euphileta (Alexander, 1924)
20. Geranomyia gifuensis (Alexander, 1921)
21. Geranomyia sp.
22. Limonia anthracina (Alexander, 1922)
ガガンボ科
23. Dolichopeza (Oropeza) candidipes (Alexander, 1921) オオユウレイガガンボ
24. Dolichopeza (Oropeza) inomatai Alexander, 1933 イノマタユウレイガガンボ
25. Indotipula yamata yamata (Alexander, 1914) マエキガガンボ
26. Nephrotoma virgata (Coquillett, 1898) キイロホソガガンボ
27. Tipula (Acutipula) gemma Alexander, 1953
28. Tipula (Yamatotipula) aino Alexander, 1914 キリウジガガンボ
29. Tipula (Yamatotipula) patagiata Alexander, 1924 クロキリウジガガンボ
※一部の参加者がイベント後さらにガガンボ採集を続けてくださり、以下の3種が追加されました。
①Dictenidia pictipennis fasciata Coquillett, 1898 ベッコウガガンボ
②Phylidorea (Phylidorea) melanommata (Alexander, 1921)
③Ulomorpha nigricolor Alexander, 1924