3/12(日)に第12回つまり市民里山学会を十日町情報館を会場に開催しました。令和元年度から休止をしてきましたが、今回4年ぶりの開催となりました。
十日町市と津南町からなる妻有(つまり)地域の里山の自然や文化に関する5つの発表が行われ、活発な質疑が行われました。
トップバッターは、十日町高校生物部の皆さんによる「十日町市に生息するホトケドジョウについて」に関する発表です。
新潟県の絶滅危惧種に指定されている魚類ホトケドジョウの生息地を市内で確認し、生息環境の調査や個体数推定、絶滅確率の推定など、基礎的な生態調査から保全につながる知見や考察などを発表していただきました。
生息地は現在圃場整備が計画されており、生息地の消失が懸念されています。地域個体群の絶滅を防ぐにはどうしたらよいか、保全策の検討についてもお話いただきました。
津南町教育委員会文化財班・ジオパーク推進室の佐藤信之さんからは、昨年再認定となった「苗場山麓ジオパーク」の活動紹介についてご発表いただきました。
津南町と長野県栄村に広がる苗場山麓ジオパークを構成する様々なサイトをご紹介いただきながら、エリア全体の歴史的な形成史やその空間的な広がりの特徴について俯瞰的にお話をいただきました。
また、地域の教育や観光の側面から展開されている様々なご活動・地域の取り組みについても、具体例をもとにご紹介いただきました。
十日町市博物館古文書整理ボランティアの皆さんからは「心に残ったわたしの1枚 ~写真が語る十日町の暮らしと人々」と題して、約4万点にのぼる山内写真館資料の整理と得られた成果について発表いただきました。
発表は4名のボランティアの皆さまからもご登壇いただき、各々が選ばれた写真のご紹介を詳しくしていただきました。当時の暮らしや産業の片りんを垣間見ることができる、貴重な資料の数々をご紹介いただきました。
3月23日(木)まで、発表に関する写真展が情報館ギャラリーにて開催されています。第14回山内写真館資料写真展「昭和の十日町~心に残ったわたしの1枚~」、ぜひご覧ください。
休憩をはさみまして、まつのやま学園6年の小林さんからは「トノサマガエルはなぜ絶滅危惧種になったのか?-田んぼの「中干し」とオタマジャクシの上陸時期の関係-」について発表いただきました。
小林さんの研究は今年度の「いきいきわくわく科学賞2022(第58回新潟県児童生徒科学研究発表会)」で県知事賞を受賞されています。トノサマガエルのオタマジャクシの上陸時期が、田んぼの中干しのタイミングに間に合わないことを、8種類のカエルと比較から研究した成果を発表していただきました。
最後はキョロロの富塚研究員とまつのやま学園5年生の井上さんらによる「新潟県初記録の昆虫の死骸から発生する珍カビ発見秘話」についての発表です。
2019年の夏、井上さんらにより新潟県初記録の昆虫から生えるケカビの1種スポロディニエラ・ウンベラータがキョロロの森で発見されました。
本種の特徴や世界での発見の歴史、また2019年夏に発見された際のエピソードが発表されました。
5題の発表に対して、会場からはたくさんの質問が飛び交い、活発な質疑応答が繰り広げられました。
つまり市民里山学会は、市民の皆さんの活動について発表する場を設けることで、お互いに学びや交流を深め、活動内容の充実を図ることを目的としています。
地域の自然や文化の価値の理解を深め、そしてその保全や活用に向けて、市民の皆様の今後の積極的な取り組みの一助となりますことを、今後とも期待しています。