十日町市松之山の天水山のブナ林で採集したヒメガガンボ科の昆虫が、当館の加藤大智研究員(専門:ハエ目の分類学)により新種Ulomorpha longipenisとして記載されました。キョロロでは2005年に館周辺のブナ林で新種マツノヤマヒメコケムシを発見しており、松之山では15年ぶりの新種昆虫の発見となります。
【論文概要】
・発表雑誌:Zookeys(動物分類学・系統地理に関するブルガリアの国際学術雑誌)
・発表日:2020年11月30日
・論文タイトル:Synopsis of the genus Ulomorpha Osten Sacken, 1869 (Diptera, Limoniidae) in Japan.(日本におけるUlomorpha属の概要)
<論文URL https://zookeys.pensoft.net/article/52831/ >
・著者:Daichi Kato, Kozo Watanabe, Levente-Péter Kolcsár(十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ 加藤大智研究員、愛媛大学沿岸環境科学研究センター 渡辺幸三教授、同Levente-Péter Kolcsár研究員)
【新種概要】
・十日町市(松之山・天水山)で採集した個体を含め、ヒメガガンボ科Ulomorpha属の新種を記載。詳細な形態比較や国内外の研究機関が収蔵する標本調査を経て、近縁種に比べ雄交尾器の挿入器が明らかに長いなどの相違点からUlomorpha longipenisと命名。
・Ulomorpha属の新種が論文掲載されたのは世界で1949年以来71年ぶり。論文では本種と奄美諸島に分布する種を含めた2種を新種として記載。
・十日町市松之山での採集地は松之山・天水山の標高800m付近のブナ林付近。本種は日本本土に広く分布することも判明。
・松之山で採集された昆虫による新種記載は、2005年のマツノヤマヒメコケムシ以来15年ぶり。キョロロの一連の新種発見は、身近な自然環境でも新種が見つかる可能性を示す好例。展示公開や環境教育活動での活用と共に、地域の自然環境の保全や生物多様性の理解の深化を期待。
Ulomorpha longipenisを特徴づける各形質
採集地付近のブナ林(天水山標高800m付近)