2月12日(土)、十日町市情報館視聴覚ホールにて、「第3回つまり市民里山学会」を開催しました。
十日町市と津南町からなる妻有(つまり)地域には、地域の自然に博識な愛好家団体や個人がたくさんおられます。その方々が一堂に会し、調査研究活動の報告や成果発表を通して、知識を深め交流を図る会で、今年で3回目を迎えます。
昨年に引き続き、関口十日町市長から開会の言葉をいただき、開会しました。
トップバッターは、松之山自然友の会の村山祐一さんで
「信越トレイル天水山周辺の巨木・植生等資源調査-胸高周囲長200cmを超える木-」について。
10月に私たちも同行させてもらった信越トレイルでのブナ巨木調査の内容です。
一番太かったブナの推定樹齢は220年とのこと。難しい樹齢の推定は、文献資料を参考に客観的に推定されていました。次々に現れるブナの巨木に、ブナ好きとしてはうっとりでした。
続いては、森林総合研究所十日町試験地の村山茂樹さんで
「新彗星の発見-わずかなチャンスをつかむ-」です。
アマチュア天文家でもある村上さんは、なんと昨年この妻有で新彗星を発見されました。
科学技術の発達でアマチュアによる発見が難しくなり、しかも天気が悪いといわれる冬の新潟でも、通説にとらわれずにチャレンジすることの大切さを発表されていました。
午前中最後は、キョロロ館長による
「地域活性とキョロロの取り組み」について。
地域活性化の拠点施設としてのキョロロの役割を、私たちを代表して市民の皆さんに発表しました。
キョロロが取り組む様々な取り組みに、市民の皆さんもうなずきながら聞いてくださったことは、大変うれしかったです。
ここで昼休みをはさんで、
午後のトップバッターは私で、
「妻有地域の里山のブナ林の特徴と問題点-ブナ林の大きさはタネの大きさに影響するか?-」。
日本に誇る妻有地域のブナ林の特徴や、問題点について発表しました。
2009年に集めたブナのタネについて調べてみたところ、小さなブナ林ほどタネも小さくなることがわかってきました。
続いては、松之山小学校校長の山崎美枝子先生で、
「ブッポウソウの子育て・ヒナの育ち方-2010年「安吾の森」巣箱での繁殖発動から-」。
ブッポウソウの観察から生まれたいくつかの疑問点について、膨大な観察記録をもとに検証されていました。新たな疑問へのチャレンジや、ブッポウソウの保護についても強く訴えられていました。
この記録は本にも出版され、キョロロで販売もしています。
続いては、キョロロの伊藤研究員で
「2010年花ごよみ調査の報告-松之山温泉散策路に咲く花々の特徴-」について。
松之山自然友の会と協働で行った花ごよみ調査について、昨年との共通点や今回の特徴について発表しました。
会場からは、オオハンゴンソウなどの外来種の動向について継続的に調査してほしいとの声が上がっていました。
ここで休憩をはさんで、
続いては、農と縄文の体験館なじょもんの内山緑さんで、
「ヤママユガの孵化(飼育)から織糸まで」について。
ヤママユガを卵から飼育し織糸にするまでの過程を、多くの写真をもとに発表していただきました。
さなぎになったときに、繭を太陽にたくさんあてると緑色の強い繭になるのが不思議でした。
実際に織糸にした現物を持ってきてくださり(写真右下)、淡い緑がとってもきれいでした。
大トリは現大分大学で、元キョロロ学芸員の永野さんで、
「豪雪地における森林管理と土壌動物の関係-里山のブナ林vs美人林vsスギ林の土の中の生物多様性-」について。
スギ林はなにかと悪者にされがちですが、土の中の生き物を調べてみるとどっこい、ブナ林よりも多様な生き物がたくさん住んでいることを発表されていました。
これにはここ妻有地域の豪雪が密接に関係していると考えられ、雪国ならではの里山理論の大切さを訴えていました。
以上8組の発表の後、キョロロ館長のあいさつで閉会しました。
今回も、多岐にわたる分野の発表で、会場からも好評の声をたくさんいただきました。
私たちにとても身近な里山の自然も、いろんな見方、とらえ方で、わくわくするようなスゴイ発見があるんだなとあらためて感じました。
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撮影日:2011年2月12日