Archive for 9月 17th, 2023

2023年9月のハナアブしらべの活動報告

日曜日, 9月 17th, 2023

 2023年9月のハナアブしらべは16日にキョロロの森で実施しました。後半雨の予想もありましたが、晴れ時々曇りでよいコンディションでの採集となりました。

 これまでの調査地を事前に下見してきましたが、今年の異常な暑さや少雨の影響のためか、大松山や天水山ではこの時期にしては花の数・ハナアブなどの訪花昆虫の数が異常に少ない状況でした。このようにこれらの場所ではハナアブの採集が困難であると思われたので、採集地はキョロロの森となりました。キョロロの森でも同様に、ハナアブの確認種数がかなり少なくなると予想されましたが、予想以上に多くの種数を採集することができました。

 今回は11種のハナアブが採集され、そのうち1種はクロモンコハナアブという松之山未記録の種でした。クロモンコハナアブはハナアブ科の中でも種数の少ないコヒラタハナアブ亜科の一種で、幼虫はヒラタアブ亜科同様にアブラムシを食べることが知られています。

①ヨツモンハラボソハナアブ

コハナダカチビハナアブ

③ナミヒラアシヒラタアブ

④ナガツヤヒラタアブ

⑤キアシマメヒラタアブ

⑥シマアシブトハナアブ

⑦クロモンコハナアブ(松之山未記録)

⑧ホソヒラタアブ

⑨スルスミシマハナアブ

⑩スズキナガハナアブ

⑪ヨコジマオオヒラタアブ  

 初めは小坪野沢と休耕田沿いの遊歩道を歩き、湿った環境を好むミゾソバ、ツリフネソウ、シラネセンキュウなどが点々と生えるところでハナアブを比較的多く採集できました。その後はより乾いた遊歩道に移り、管理棟前の平地に生えるタラノキの花に大型のハナアブが数匹来ていました。スズキナガハナアブという種で、ハチのような派手な見た目をしているため、その種がキョロロのオリジナル生き物カードに採用されたこともあります。自分でこの種を採れなかった子が、その花にそのハナアブが再来するのをじっと見上げて待ち続ける姿からは研究者の風格を感じられ、とても印象的でした。

 これまではこの時期にマガイヒラタアブやサッポロヒゲナガハナアブなどのハナアブが9月中旬に多く見られていました。しかし、今回はこれらのハナアブが全く見れず、異常な猛暑や少雨がこれらの生態に大きく影響を与えているのかもしれません。年によって異なる発生パターンが見られてやはり自然は奥深いですね。

 最後に、全体の標本写真の右下にあるハナアブ科ではないハエについて紹介します。こちらはハナアブ科同様によく花やその近くの葉の上などで見られるメバエ科の仲間で、他の昆虫に寄生することが知られています。今回私がキョロロで初めて見た種で、何とも言えない威圧感のようなものを感じました。この種はメバエ属Conops (Asiconops)の一種で、ハナアブ科とは異なり、棒状の口が伸びているのが特徴です。参加者の子どもが花の上にとまっているこのハエを採集してくれました。すぐに種を確定できるものではなかったのでもう少し文献などで調べてみたいと思います。

 今回は6名の方にご参加いただきました。調査のご協力、誠にありがとうございました。次回のハナアブしらべは10月21日に実施します。またのご参加をお待ちしています。