Archive for 7月, 2021

春季企画展「The昆虫採集展」の投票結果

日曜日, 7月 18th, 2021

2021年3月20日から始まった「The昆虫採集展」は7月11日をもって終了しました。この期間中も新型コロナの影響が続いていましたが、例年並みのご来館者数となりました。誠にありがとうございました。本企画展では様々な昆虫採集方法を紹介し、その中でよく使われる採集方法10種類について人気投票を設けていましたのでその結果をお知らせします。今回は157名のお客様に投票していただきました。

 まず投票者の性別構成は男性41%・女性46%と、女性の方が5%も多い結果となりました。去年夏の企画展「虫のスゴ技展」では男性51.9%・女性43.6%で男性が8.3%多く、今回の企画展は比較的女性に関心を持たれる内容だったのかもしれません。投票者の年齢構成については、0~14歳までが48%を占めていました。前回の夏の企画展では(年齢区分が異なります)、10代未満が56.1%であり、今回の企画展は明らかに投票者の年齢層が全体的に高めであることがわかります。30代以上で比べると、今回が23%、前回が13.6%となっています。内容が少し大人向けだったのだと思います。年齢構成を男性・女性で比較すると、前回と似た傾向が出ていました。男性では若い年齢層、特に0~14歳が60%と多く、女性では0~14歳が41%でそれ以降の年齢層が全体的に多くなりました。

 さて肝心の採集方法の投票では「好きな、または、やってみたい昆虫採集方法」で第三位まで選んでいただきました。最も人気だったのは、「第一位」において2位と大差をつけて1位だった「⑩ライトトラップ」でした。暗闇の中でカブトムシやクワガタなどの人気昆虫が飛んでくるかもしれないというドキドキ・ワクワクの採集方法なので1位もうなずけますね。2位も3位と大差をつけての「①捕虫網」でした。昆虫採集の王道ともいえる最もシンプルかつ応用のきく方法でやはり人気でした。3位以下は接戦で、3位が「⑧ツルグレン装置」4位が「⑦イエローパントラップ」でした。第一位から第三位までの合計、すなわち投票券に書かれた数の多さの第4位まででは、「第一位」の上位3位の順位に「⑥ピットフォールトラップ」が2位で割り込んだ形となりました。「⑥ピットフォールトラップ」は一番やりたいわけではないけれど、第二位・第三位で上位に上がってくる名脇役のような存在でした。一方「⑦イエローパントラップ」は「第一位」では4位でしたが、「第一~三位合計」では9位と低い順位でした。男女で比較すると「第一~三位合計」では順位は変わらず、「第一位」では男性で3位に「⑦イエローパントラップ」と同列で「②ビーティング」が来ているのが特徴的でした。

 全体として1位2位に「ライトトラップ」「捕虫網」が来るのはなんとなく予想できましたが、それ以降は何も予想がつかず、3位「ツルグレン装置」、4位「イエローパントラップ」が来たのは面白く思いました。「ツルグレン装置」は普段は小さすぎて捕まえにくい微小な虫を一気に採集でき、顕微鏡を通してミクロな世界をのぞけるところに魅力があったのだと思います。また、これを1位に選んだ方から「なんかかっこいい」というコメントもありました。「イエローパントラップ」は黄色い容器と水と洗剤のみでできるお手軽さがよかったようで、これを1位に選んだ方から「すぐにできそう」などのコメントがありました。

 今回の企画展で様々な昆虫採集方法を知っていただき、昆虫採集をより楽しんでいただければ幸いです。一方で特に人口が比較的多い地域ではカブトムシやクワガタを採集できるノムラホイホイなどのトラップが仕掛けられたまま放置されている状態が多く目撃され、問題になっています。このような問題が大きくなると、ある地域のように「トラップ採集禁止」の規制がかかってしまうかもしれません。ぜひ採集マナーも守った上で採集していただくようお願い致します。

7/16(金)まで展示入れ替え休館中。夏季企画展「眼展-生き物が見る世界のカタチ-」

月曜日, 7月 12th, 2021

本日から7/16(金)まで展示入れ替え作業のためキョロロは休館となります。予めご了承ください。
7/17(土)から夏季企画展「眼展-生き物が見る世界のカタチ-」がスタートします!

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\生き物はどのように世界を見ているのか?/

7月17日(土)から動物が持つ「眼」をテーマに、夏季企画展「眼展-生き物が見る世界のカタチ-」を開催します。
眼から入る情報は人間の脳で処理する情報の大部分を占めると言われています。全動物種の90%以上が眼を持ち、視覚は多くの動物にとって重要な役割を果たしています。
生き物はどのように世界を見ているのでしょうか?眼の形や機能は動物によって実に多様で、動物ごとに「世界の見え方」は異なっています。
企画展では里山に生息する昆虫やクモ、カエル、ヘビ、鳥などの様々な動物が持つ眼の多様性と、それらの動物がどう世界を見ているのかをご紹介します。

<企画展の見どころ>
企画展では様々な動物の眼の仕組みや、機能、進化を写真やイラストを利用して解説します。
またキョロロ周辺の里山に生息する昆虫やカエルなどの持つ眼を生体や標本、クイズラリーなどの体験型展示を通して紹介します。
今年も「カブトムシ観察コーナー」を開設します(感染拡大防止策としてケージタイプ)。

<企画展の関連展示>
収蔵標本や生体を中心とした自然史資料のデジタルアーカイブ化を今年度から進めています。その成果の一部を、大地の芸術祭アーティストの橋本典久氏と連携し、高解像度の人間大昆虫写真「Life-size」として印刷し、新作を含め野外に設置します。作品を通じて身近な昆虫の持つ造形美や多様性に触れてみてください。

【会期】
2021年7月17日(土)~10月17日(日)
※7月12日(月)~16日(金)は展示入れ替え休館

7/10 ハナアブしらべの結果報告

日曜日, 7月 11th, 2021

今回のハナアブしらべはキョロロの森ではなく、キョロロから車で10分弱ほどの距離にある東川トンネル周辺で実施しました。現在キョロロの森ではハナアブなどがよく集まる花があまり咲いておらず、採集が難しいと判断したためです。東川トンネル周辺では多くのケナシミヤマシシウド(ミチノクヨロイグサ)の花が咲いており、午前中の下見の段階ではハナアブを含む多くの昆虫が集まっているのが見えました。しかし残念なことに開始してから間もなくパラパラと雨が降り始め、雨雲の動きの予想に反して土砂降りとなることもありました。雨がほぼ降っていなかった序盤では花に集まるハナアブなどの昆虫がそれなりに見えましたが、雨が降ると多くの昆虫はどこかへ姿を消してしまうため、なかなか厳しい調査となりました。そんな状況でしたが、今回の参加者8名には雨に濡れながらも最後まで頑張って採集していただきました。誠にありがとうございました。

採集できたハナアブは今回5種で、そのうち前館長採集のオオヒメヒラタアブは松之山未確認の種でした。Mご一家が採集されたマツムラクロハナアブは今年初確認でした。

①ミナミヒメヒラタアブ 4♂

②ホソヒラタアブ 3♂7♀

③オオヒメヒラタアブ(松之山初確認!)1♂

④キアシマメヒラタアブ 1♂

⑤マツムラクロハナアブ 1♀

午前中の下見の段階では少なくともこの2倍の種数は採れそうな気がしていて楽しみだったのですが、天気に期待を裏切られてしまいました。あの珍ハナアブの仲間であるベッコウハナアブ類も花に集まるため期待していましたが、なかなか簡単にはいきません。しかし、今回も松之山未確認のハナアブが採集され、キョロロ前館長によって1種追加されました。さすがは前館長!これで松之山のハナアブは合計43種となりました。

 

ハナアブ以外のハエ目トピック

1.K君が日本最大のガガンボ、ミカドガガンボを手づかみでの採集に成功しました。通常は近づいたら素早く遠くへ飛んで行ってしまうため、手づかみ採集は困難です。暗いトンネル内の壁にとまっていたミカドガガンボをK君が見事に見つけてその大きさ・形の威圧感に臆することなく手づかみした姿には感動を覚えるほどでした。ガガンボを研究している私ですらおそらく小学生の頃に手づかみする度胸はなかったでしょう…。

2.ヒメシマクサアブが現れました。このアブは体長2cmほどで、分布が局所的で珍しい種とされており、絶滅のおそれのある野生生物のリストであるレッドデータブックで「情報不足」と評価され、絶滅危惧種の候補者となっています。「情報不足」であるのは、そもそも発見例が少なく、個体数が減少しているのかどうかが把握しづらいためであると考えられます。今回私も初めてこの種を見ることができ密かに興奮しました。

次回のハナアブしらべは8/14(土)13:30-16:00に行います。この時期は標高の高い涼しいところの方がハナアブが採れると予想されるため、標高900mほどの天水山付近で実施することを検討しています。次回はお盆の時期と重なりますが、皆様のご参加をお待ちしております。