【開催報告】第13回つまり市民里山学会
水曜日, 11月 29th, 202311/25(土)に第13回つまり市民里山学会を十日町情報館を会場に開催しました。
十日町市と津南町からなる妻有(つまり)地域の里山の自然や文化に関する5つの発表が行われ、活発な質疑が行われました。
吉田公民館名ヶ山分館長の小海雅秀さんからは「春夏秋冬笑いと学び、里山をまるごといただきます」と題し、吉田公民館名ヶ山分館の幼少年事業についてお話いただきました。
里山の自然を舞台に『子どもたちの多面的な心の発達』 を後押しすることを目的とした「里山わらび(笑躾)」の活動について、四季を通じた様々な実践例をご紹介いただきました。子どもたちが学校以外の場所で多様な価値観や自然から学ぶ機会をつくり、主体性を育む教育プログラムです。子どもたちの笑顔や見守る大人たちの温かいまなざしがとても印象的でした。
「森の三方よし」の小西さん、鈴木さん、藤野さんからは、総合学習がきかっけとなって起業した「森の三方よし」の活動についてお話しいただきました。
津南中等での総合学習を通して津南町の森林の歴史・魅力・課題を学び、「津南町の杉を伐採し、代わりに広葉樹を植え、伐採した杉をアロマオイルなどに加工し販売する」という事業を考案し、大学進学後に「合同会社森の三方よし」を設立した経緯や、現在展開している杉に関連する商品の販売や広葉樹の植林、津南町の小中学校への木育活動などをご紹介いただきました。
十日町市教育委員会の阿部さんからは、「ちんころの起源?-2月1日の年中行事「犬の子朔日(いんのこついたち)」-」」について、この新潟県中越地方の独特な年中行事について地域的変異と変遷についてお話しいただきました。
「ちんころ」は犬や十二支を型どった十日町名物のしんこ細工ですが、同様に団子で犬などを作って飾る新潟県中越地域の独特な「犬の子朔日」という2月1日の年中行事があります。取材や古文書調査で「犬の子朔日」の県内における地理的変異や変遷についてご紹介いただきました。ちんころとの直接的な系統関係を示すことは、現状では困難であったということです。
海洋高校の馬場先生からは、前任校の十日町高校生物部での活動を中心に「十日町市に生息するホトケドジョウの危機」と題してお話しいただきました。
新潟県の絶滅危惧種に指定されている魚類ホトケドジョウの生息地を市内で確認し、生息環境の調査や個体数推定、絶滅確率の推定など、基礎的な生態調査から保全につながる知見や考察などを発表していただきました。生息地は現在圃場整備が計画されており、生息地の消失が懸念されています。地域個体群の絶滅を防ぐにはどうしたらよいか、保全策の検討についてもお話いただきました。
キョロロの大平研究員からは、今年キョロロで展開してきた一連のアメリカザリガニに関する活動を「とおかまちザリガニ捜索隊の成果と課題」と題してお話しいただきました。
今年6月に条件付特定外来生物となったアメリカザリガニ。市内における生息状況、キョロロの森内における定例捕獲作戦の成果などを、キョロロ友の会事業として開催してきました。繁殖のタイミング、捕獲できないサイズ、密度低下がみられた/見られない池など、新たにわかってきた知見や今後の展開について発表していただきました。
5題の発表に対して、会場からはたくさんの質問が飛び交い、活発な質疑応答が繰り広げられました。
つまり市民里山学会は、市民の皆さんの活動について発表する場を設けることで、お互いに学びや交流を深め、活動内容の充実を図ることを目的としています。
地域の自然や文化の価値の理解を深め、そしてその保全や活用に向けて、市民の皆様の今後の積極的な取り組みの一助となりますことを、今後とも期待しています。