今年度から新しい市民参加型生き物調査「ガガンボしらべ」がスタートします。キョロロ周辺に生息するガガンボを調査する「ガガンボしらべ」、博物館のイベントとしては、ガガンボに関係するものは世界でも他にないのではないでしょうか。
ここでいうガガンボとは、厳密にはハエ目ガガンボ上科に含まれる種を対象にしていて、この中にオビヒメガガンボ科、ヒメガガンボ科、シリブトガガンボ科、ガガンボ科の4科が含まれています。ガガンボ上科は種数が多く、日本だけでも800種弱、世界で16000種ほどが学名を与えられています。キョロロを含む松之山におけるガガンボは、既に捕虫網やマレーズトラップの2~3年の調査により、220種が確認されていますが、さらなる未発見種に出会えるかどうか。
初回は6月25日(日)に開催しました。まず初めに、ガガンボとは何かという簡単な講義をしました。ここでいうガガンボとは、ハエ目の仲間であること、水のある環境に多いこと、ガガンボ上科以外にもさまざまな「ガガンボ」が名前にある別のグループがあることなどを紹介しました。
その後は採集に出かけました。今回は天気が良く暑い日でした。キョロロのある標高300 m程度の環境だと、種数・個体数はあまり多くない時期です。それでも参加者9名の方々には一生懸命採集していただき、2科13種(1種は私によるイベント後の追加採集)が採集されました。
驚いたことに、この13種の中にキョロロ未確認の種が2種も含まれていました。1種はErioptera xanthopteraという種で、全国採集してきた私でも青森県でしか確認していない種でした。もう一種はRhipidia属のEurhipidia亜属に含まれる未記載種(≒新種)で、国内では新潟県のみで確認している種でした。今回採集した種の約15%もがキョロロ未確認の種ということになります。
ガガンボに限らず、生物は同じ場所でも毎年異なる様子を見せてくれます。例えば去年全く見られなかった種が、今年はたくさん見られる、あるいはその逆の現象が起こることがあります。ある程度調査したつもりでも、まだまだ未発見の種が潜んでいるという奥深さや、生物相を知る上で毎年調査を続けることの大切さを思い知らされる回となりました。皆様のご協力のお陰です。ご協力いただきありがとうございました。
採集後は、標本づくりの最初の作業である展翅・展足に挑戦してもらいました。ガガンボの場合は三角紙に挟むのですが、その時に翅を背中側に立て、脚を綺麗に畳みながら体を横に向けて入れるという、極めて難しい作業です。余計な力を入れると体が潰れたり、簡単に脚が取れてしまったりと、ガガンボのもろさを体験して頂けたかと思います。
次回のガガンボしらべは約2か月後の9/3となります。今回のような驚きの発見にまた出会えるかもしれません。皆様のご参加をお待ちしております。