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2023年5月ハナアブしらべの結果報告

日曜日, 5月 21st, 2023

今年最初のハナアブしらべは松之山の中央にある標高674mに達する大松山で行いました。これまでの採集環境と異なる点は、地質が火成岩からなるということと、山頂でも採集を行う事です。山頂で採集することについては、いくつかのメリットがあります。一つはヒルトッピングという、飛ぶのが上手なチョウ、トンボ、ハチ、ハエなどの昆虫が交尾相手を見つけようとして山の頂上に向かう習性があるためです。もう一つは上昇流が山沿いの昆虫を山頂付近まで押し上げるためで、これを利用した採集方法は吹上採集と呼ばれます。今回は、これらの今までと異なる要素が松之山未発見のハナアブの発見につながらないか、期待しながら採集調査に臨みました。

天気は晴れ~曇りのまずまずの条件でした。ところが、我々に待ち受けていたのは尋常でない量のヤブカの大群でした。山頂までの道のりはジメジメした暗いところが多く、そこではとても採集できるような状態ではありませんでした。逃げるように山頂まで行くと、かなり量は減りましたがそれでも絶えず少量の蚊が追いかけてきました。同じくキョロロの調査イベントである「花ごよみ」でも大松山で毎月実施されたことがありましたが、ヤブカに悩まされることはなかったようです。今回はこのヤブカの発生ピークと重なってしまったか、あるいは今年は大量発生の年なのか・・・・。

このヤブカの猛攻によって早めに調査を切り上げることになりましたが、山頂にはハナアブやヤドリバエなどのハエや、ハナバチ類、チョウ類が多く集まっていました。今回は11種のハナアブを採集することができ、そのうち1種はなんと新潟県未記録のオオクチグロヒラタアブでした。その他、エダシゲオビヒラタアブとモンキモモブトハナアブはハナアブしらべでは初登場でした。この11種は以下の通りです。

①ナミハナアブ 2オス

②ツマキモモブトハナアブ 1オス

③ナミホシヒラタアブ 2オス

④オオクチグロヒラタアブ 1オス

⑤エダシゲオビヒラタアブ 1オス

⑥クロヒラタアブ 1オス

⑦ホソツヤヒラタアブ 1オス

⑧オオハナアブ 1オス

⑨モンキモモブトハナアブ 1オス

⑩マダラコシボソハナアブ 1メス

⑪ナガツヤヒラタアブ 1オス

新潟県未記録のオオクチグロヒラタアブはクチグロヒラタアブ属というグループに属しますが、外見上よく似た属が他にもあります。しかし、顕微鏡で拡大してみると、頭部と胸部の間の側面の小さな領域(前胸前側板)に長毛を生じるという、似た者同士の属グループの中では珍しい特徴を持ちます。写真だとかなり見づらいですが、クチグロヒラタアブ属(左側)では青い破線で囲った部分で毛の根元の部分が黒い点々として映っているのが見えるでしょうか(拡大して見ないと判別しづらいです)。

今回は運動会シーズンと重なったこともあり、参加者は少なめの3名でした。ヤブカの襲撃が絶えずあった中、調査を頑張っていただきました。お陰様でまたさらに松之山産ハナアブが1種追加されました。誠にありがとうございました。

次回のハナアブしらべは6/17です。次回は世界的にも珍しいハエ目を研究する同好会である「双翅目談話会」の会員の皆様と共同でハナアブ科を含むハエ目を調査する予定です。2021年6月に参加者が採集した幻のハナアブをみんなの力で発見できると期待したいところです。日本全国からハエ目のスペシャリストが大集合する珍しい機会ですので、ご関心のある方はぜひ次回ご参加ください。

 

追記

研究員個人のキョロロの森での5/16の調査で、次の2種の松之山未記録のハナアブを発見しました。キョロロの森でどんなに調査をしてもまだまだ未発見の種が出てくるものですね。