6月ハナアブしらべの報告
日曜日, 6月 19th, 20226月のハナアブしらべは18日に今回初となる天水山付近で実施されました。これまでの調査地であったキョロロの森は標高300mほどの里山環境で当日は蒸し暑い日でしたが、天水山付近では標高が900mほどもあり、涼しさを感じられるほどで、キョロロの森では絶対に聞く事のできないエゾハルゼミも時折鳴いていました。終始うっすら曇りの天気でしたが、今回は11名の方にご参加いただき、ハナアブに限らず様々な昆虫と触れ合うことができました。
今回の天水山付近での調査の結果、15種ものハナアブ科が採集されました。これは過去最多であった去年10月のハナブしらべの14種を超える種数となりました!今回採集されたもののうちクロハナアブ属の不明種は、これまで松之山で確認されたことのない種でした。採集された種は以下の通りです。
- ①ケヒラタアブ 4♂1♀
- ②ナミハナアブ 2♀
- ③マツムラクロハナアブ 1♂
- ④アリノスアブ 1♀
- ⑤ミナミヒメヒラタアブ3♂4♀
- ⑥ナガツヤヒラタアブ 1♀
- ⑦キベリヒラタアブ 1♀
- ⑧ナミホシヒラタアブ8♂
- ⑨クロヒラタアブ1♀
- ⑩キアシハラナガハナアブ1♂
- ⑪クロハナアブ属の一種1♀ (松之山初確認)
- ⑫ホソヒラタアブ1♂1♀
- ⑬マガイヒラタアブ1♀
- ⑭ニッポンクロハナアブ1♀
- ⑮キアシマメヒラタアブ1♂
また、今回得られた種のうち、①ケヒラタアブ、②ナミハナアブ、⑦キベリヒラタアブ、⑧ナミホシヒラタアブ、⑨クロヒラタアブはこれまで松之山で1個体しか得られていなかったものでした。一般的にはどれも珍しくはない種ですが、キョロロ周辺では個体数の少ない種である可能性が考えられます。⑨のクロヒラタアブはこれまでメス一個体のみが採取され、種の判別が不可能でしたが、事前調査でオスを確認していましたので、おそらく本種であると思われます。また、⑭ニッポンクロハナアブはキョロロ周辺では遅くとも5月中旬までしか成虫が見られませんが、山影に雪がまだ残り、餌となるフキノトウの花が咲いている天水山付近では、まだ本種を確認することができます。
そして今回ハナアブよりも圧倒的な人気を誇った昆虫がいました。それはユキグニコルリクワガタという青~緑色の金属光沢をもつ小型のクワガタでした。この種はおよそ秋田県南部~長野県北部という限られた範囲の標高の高いところに生息していまして、成虫はブナの新芽を餌としているため、春~初夏の間しか見る事ができません。ある程度の標高の高いところを好むため、キョロロ周辺では見られません。一般的なクワガタのように大きな大あごはありませんが、「クワガタ」というネームバリューに加え、綺麗でおしゃれな姿に子供たちは夢中になりました(一時はルリクワしらべになりました…)。
その他、花に集まるハナアブやハチに混じって面白い形をした別のアブがいたので紹介します(ハナアブ全体写真の「ハナアブ以外のハエ目」の左・中央)。それはセダカコガシラアブ属の一種で、このように背中が背面に突出しています。また口が非常に長く、花の蜜を吸うのに適しています。生態も変わっていて、幼虫はクモの体内に潜り込み寄生します。成虫は花に来るのでハナアブと間違えやすいかもしれません。
このように環境を変えると生息している種が変わったり、同じ種でも個体数や発生時期が変わったりなど、新たな発見があります。7月にはまた違った生物に出会えることでしょう。
ハナアブしらべは参加者とともに松之山に生息するハナアブ科を定期的に調査して貴重な自然資料として標本を残し、分類研究が十分ではない日本のハナアブ研究に貢献することを目的としたイベントです。研究が遅れている分、新発見に溢れたイベントです。次回も皆様のご参加をお待ちしております。今回ご参加いただいた皆様誠にありがとうございました!