11月ハナアブしらべ活動報告

11月13日のハナアブしらべは冬間近な雰囲気の中行われました。採れるハナアブも非常に少ないと予告していたにも関わらず、6名の方々に参加していただきました。天気は晴れ時々曇りという好条件でしたが、採れたハナアブは安定のホソヒラタアブ1種のみでした!合計8個体(3♂5♀)が採集されました。松之山では早ければ3月から見ることのできるハナアブで、稀に真冬の晴れた日に見ることすらあります。複眼が中央でくっついているのがオス、離れているのがメスで、これはハナアブ科でほぼ共通の特徴で、ハエ目の他のグループでよく見られる特徴でもあります。

この時期に咲いている花は非常に少なく、虫を集める花は北米からの外来種セイタカアワダチソウのみで、ホソヒラタアブもその周辺からのみ採集されました。外来種というと響きが悪いですが、花を必要とする昆虫にとっては冬前の貴重なエサ資源となっています。

ハナアブがこれ以上採れる見込みがあまりなかったため、調査を早めに切り上げました。空いた時間で標本作成と11月1~13日の間仕掛けたマレーズトラップの成果を確認して、その中からハナアブのみを参加者に引き抜いてもらいました。なんとこちらもホソヒラタアブのみで、合計11個体(4♂7♀)が確認されました。春から暖かい時期に比べると収量が少ないですが、下の写真の黒い点々は全て虫です。

マレーズトラップ(下写真左)はその下の図の通り虫が壁に当たると上へ上へと歩いたり飛んだりする習性を利用して、最終的に虫を一か所集めて採集する方法です。下写真右の黒い液体が入った容器は、虫の多い春に約1週間仕掛けた結果です。仕掛けた時は透明ですが、大量の虫で真っ黒になってしまうのです。時間あたりで換算すると虫網で採る方が圧倒的に効率は良いですが、何もせずトラップを放置しておくだけで虫が採れるというのは大きな強みです。

また、ハナアブ以外のハエ目(主にガガンボ類)も採っていただきました。実は去年のこの時期に非常に変わった新種の可能性大のガガンボダマシ科がキョロロ館内にいるのを発見していたので、皆さんにも探していただきました。去年採集できたのは1♀のみと珍しいようで、残念ながらそのガガンボダマシは今回採れませんでした。しかし、その他のガガンボダマシや他のハエ目のグループは非常に多く飛んでいました。下の写真が採集していただいたハエ目です。

ガガンボダマシ科は晩秋から春までの寒い時期のみに成虫が発生するグループで、私が研究するガガンボ上科とは異なる親戚のグループです。今の時期にやや大きめ蚊柱のようなものが群れて上下にパラパラと飛んでいれば、それはほぼガガンボダマシと言っていいでしょう。ガガンボダマシ科とガガンボ上科はよく似ていますが、頭部を見ると違いが顕著で(肉眼では厳しいですが!)、単眼があって触角が糸状なのがガガンボダマシ科、単眼がなく触角が数珠状なのがガガンボ上科になります。この違いを知っていたら虫好きの人の中でもかなりレアな人材でしょう!

また話が脱線してしまいましたが、今回のハナアブ調べではホソヒラタアブ1種のみと、秋から冬への移り変わりを感じさせる回でした。また、寒い時期でもまだ活動し続けるホソヒラタアブのたくましさも知れたかと思います。そして今年度のハナアブしらべはこれで終わりとなります。これまで参加してくださった皆様、人気とは言えないマイナー昆虫の調査にもかかわらず本当にありがとうございました!去年度からの調査結果はキョロロの研究紀要で発表する予定です。去年度で38種だったものが、お陰様で今年度ではなんと79種となりました!来年度は調査場所を変えて、まだ見ぬハナアブがいるであろう大厳寺高原で実施しようと思っております。興味がある方はぜひご参加ください。

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