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2023年7月のハナアブしらべの結果報告

月曜日, 7月 17th, 2023

今年7月のハナアブしらべは5月と同様に大松山(標高約670m)で実施されました。山の頂上周辺では、飛んで生活する昆虫が集まる習性があります。前回の大松山での調査では蚊の大群に襲われましたが、今回は幸いにもほとんど蚊を見る事はありませんでした。天気は晴れでしたが、7月ともなると気温も高く、蒸し暑い中での調査となりました。

今回採集されたハナアブは以下の5種でした。

〇ミナミヒメヒラタアブ 15オス4メス

〇オオヒメヒラタアブ 1メス

〇キアシマメヒラタアブ 2メス1オス

〇オオハナアブ 1オス

〇ヨコジマオオヒラタアブ 1オス

7月のように気温が高くなってくると、キョロロ周辺でのハナアブ科の種数は少なくなる傾向がありました。やや標高の高い大松山でも同様の傾向がみられる可能性が高そうです。過去の異なる場所で実施された同月の調査と比較すると、2021年7月の松之山の東山トンネル付近(標高約300m)での調査では5種、2022年7月の天水山(標高約900m)での調査では8種が確認されていました。天候や採集の仕方によっても種数は上下しますが、今の時期は標高の高いところの方がハナアブの種数が多いようです。

今回最も多く採集されたミナミヒメヒラタアブは、腹部の模様の変異が見やすい種の一つです。黒い縞模様が完全なものから、その縞の大部分が薄れているものまで様々な段階の個体が見られます。ハナアブの腹部の模様の個体変異については、松之山でもよく見られるホソヒラタアブの研究例があります。ホソヒラタアブは蛹の時期の気温によって腹部の模様が変わり、気温が低いほど黒い模様が大きくなるというものです(Dušek &Láska, 1974)。また実際に晩秋~冬と早春に見られるホソヒラアブでは、黒い模様の大きい個体が多いとされていて(祝,1997)、松之山でもこの現象を確認しています。ミナミヒメヒラタアブも成虫発生期間が長いので、しっかり調べてみるとこのような模様と季節の関連性が見られるかもしれません。

今回はハナアブが少なめの時期でしたが、時折現れるミヤマカラスアゲハやオニヤンマなどの大型昆虫たちも我々を楽しませてくれました。暑い中でしたが、9名の方々にご参加いただきました。ご協力いただき誠にありがとうございました。次回も同じく暑い8月ですので、標高高めのところを狙おうか考え中です。次回のご参加もお待ちしております。

 

引用文献

Dušek J & Láska P (1974) Influence of temperature during pupal development on the colour of syrphid adults (Syrphidae, Diptera). Folia Facultatis Scientiarum Naturalium Universitatis Purkynianae Brunensis. Biologia. 15: 77-81.

祝 輝男(1997)季節によって模様替え!鹿児島市2地点におけるホソヒラタアブの色彩変異について.はなあぶ 3: 9-13.