Archive for 10月 17th, 2022

2022年10月のハナアブしらべの活動報告

月曜日, 10月 17th, 2022

 今年10月のハナアブしらべは6人の参加者と一緒に大厳寺高原で行われました。開始してからしばらくは快晴で、特にキャンプ場周辺の花に多くのハナアブやその他の昆虫が集まっていたので、その場でしばらく採集をすることに。それから普段の採集ポイントである標高900m付近の場所の様子を見に行きましたが、そこでは花の時期がほぼ終わっておりハナアブがほとんど見られませんでした。それからすぐに元の場所に戻って調査をしましたが、天気が曇り始めて肌寒くなり、見られるハナアブの数が激減してしまいました。

 大部分は晴れていたものの気温の低さを感じさせる回でしたが、成果はなかなかのものでした。38個体11種のハナアブ(①-⑪)が採集され、そのうちの1種、ヘリヒラタアブは今回初確認の種で、十日町市未記録の種でした。また、ハナアブに雰囲気が似ているその他のハエ目(A-D)も多数見られました。今回採集されたハナアブは以下の通りです。

①ホソヒラタアブ 9♂7♀

②オオヒメヒラタアブ 1♂2♀

③ケヒラタアブ 7♀

④オオフタホシヒラタアブ 1♀

⑤シマハナアブ 1♀

⑥タカネムツモンホソヒラタアブ 1♂2♀

⑦ホソヒメヒラタアブ 1♂

⑧ヘリヒラタアブ 1♂(十日町市未記録)

⑨オオハナアブ 1♀

⑩キスネクロハナアブ 3♂1♀

⑪スルスミシマハナアブ 1♀

 今回多く観察できたのはホソヒラタアブとケヒラタアブでした。KR君が採集した十日町市未記録のヘリヒラタアブはやや大型で腹部の丸みと平さが強く、よく似たマルヒラタアブとは顔に黒い筋があることで見分けることができます。MSi君が採集したオオフタホシヒラタアブはぱっと見はケヒラタアブにそっくりですが、腹部の基部にある1対の黄色い模様の形が円形で、メスの脚は基部の方まで黄色です。ケヒラタアブが多く飛んでいる中、稀にこの種が紛れていたようです。過去にもキョロロの森で仕掛けたマレーズトラップで1個体が採れたのみでした。

 その他のハエ目でよく飛んでいたのが、MSuさんが採集してくれたCのシナヒラタヤドリバエ(シナヒラタハナバエ)とDのツマグロキンバエでした。Cは幼虫がカメムシ類に寄生します。そして前回新潟県未記録と分かったAのジョウザンメバエを今回もKR君が1個体採集してくれました。これらの3種はすべて花に来るハエ目ですが、Bのアイノヒゲボソムシヒキは秋の涼しい時期のみ見られるハエ目で、日の当たる木の幹などでエサとなる小さな昆虫が飛んでくるのを待っています。

 そして、ハナアブしらべによく参加してくれるHT君が、このイベント以外でキョロロ周辺で10月に採集してくれた小さなハナアブが、なんと県内未記録のジョウザンマメヒラタアブという種であることがわかりました。ハナアブしらべでもよく採れるキアシマメヒラタアブとそっくりですが、やや大きくて細く、腹部の中央当たりに小さな明るい1対の点があります。念のためこれまで採集したキアシマメヒラタアブの中に紛れていないか、約100個体の標本をチェックしましたが、やはり1匹もいませんでした。松之山では非常に珍しい種である可能性があります。

 今回は天気に恵まれ、10月中旬の標高高めの涼しい場所での調査でしたが、(時にはアケビ採集に夢中になりながら)素晴らしい成果となりました。次回のハナアブしらべは今年最後となり、11月19日(土)の13:30-16:00で、キョロロ周辺で行う予定です。晴れていればハナアブが活動するギリギリの時期で、曇りではほとんど採集できないと考えられます。そのため次回は採集は短く終わらせ、その後は館内でこれまでの成果のまとめをパワポで発表したいと思います。今回もご参加いただいた皆様、ありがとうございました。またのご参加をお待ちしております。

 

 

【開催報告】森のめぐみふれあい木育体験2022

月曜日, 10月 17th, 2022

10月16日(日)に妻有木育推進協議会主催の「森のめぐみふれあい木育体験」が今年もキョロロを会場に開催されました。
樹木伐採のデモンストレーション、森林整備体験と伐採木を使った昆虫ハウス作り、木のおもちゃ体験、スウェーデントーチ作り&焚き火で焼き芋など、森のめぐみを五感で感じ学ぶことができる盛りだくさんな木育体験が行われました!

まず最初にスギ伐採のデモンストレーションの見学です。
木材として私たちが木を使うことができるのは、山で木を育て・伐る「林業」というお仕事があるのおかげです。
十日町地域森林組合さんの見事な伐倒技術を、目の前で見学することができました。


ズドーンという大きな音と共に倒れるスギの木。
伐採されたスギは枝の処理や玉切りがその場でなされました。
伐採は、木の「命」が木材として使われていく中の最初の作業です。
南魚沼地域振興局の方から、間伐の意味や注意点などレクチャーをいただきました。



今回のスギは樹齢約40年ほどでした。

引き続き森林整備体験を行いました。
林内の低木を伐採し、それを積み上げて昆虫の産卵場所や隠れ家となる「昆虫ハウス」をみんなで作りました。


ノコギリを使って自分の手で木を切り進めると、林内がどんどんすっきりとしていきます。
森が明るくなると土の中で眠っていた種子(埋土種子)の発芽が促進されます。昨年作業した場所では、チゴユリやスミレの仲間、ミツバアケビの芽生えがたくさん見られています。
また林内がすっきりすることで、森林性の猛禽類なども生息しやすい環境になることも期待しています。



このような低木伐採は燃料の確保のために行われてきた伝統的な里山管理でしたが、燃料として森林資源をほとんど使わなくなった現在、里山には管理が停止した低木の群落が数多く見られます。
多様な状態の森があることで、様々な生き物も利用しやすい森づくりも目指します。明るくなった林内に整備の効果を肌で感じながら、森への人の関わりについて体験しました。

伐採したスギはその場でスウェーデントーチ(焚火用に切れ込みを入れた丸太)に加工していただきました。
スウェーデントーチは近年キャンプなどでのアウトドアアイテムとして人気のある丸太型の焚火です。
私たちは暮らしに使うエネルギーのほとんどを化石燃料に依存していますが、木は燃料として使われてきた持続可能な資源でもあります。

昨年のイベントで作って乾燥させたスウェーデントーチで焚火の体験も。
「マッチで火をつける」ことも、なかなか現代の生活の中では限定的な体験です。
スギの葉っぱにうまく火を移し、もろもろと火が大きくなり、スウェーデントーチに火が移っていきます。
焼き芋もうまく焼けました。木の命が燃料に変わり、熱やけむりが発生し、焼き芋を美味しくしてくれる。そんな過程も五感で感じることができました。



管理棟では「森のおくりもの」さんによる木のおもちゃ体験が行われました。
地域の木で作られた木のおもちゃの数々。積み上げたり、崩したり。音を奏でたり、おままごとをしたり。とても多様なあそびが繰り広げられました。
木の手触りやぬくもりを感じながら、木のおもちゃで遊ぶ楽しそうな子どものたちの声が響いていました。みなさん夢中です!



里山の中で森の様々なめぐみを体験を通じて感じることができた「森のめぐみふれあい木育体験」。
森のめぐみにふれる素敵な時間を過ごすことができました!