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2023年8月のハナアブしらべの結果報告

日曜日, 8月 20th, 2023

今月8月のハナアブしらべはここのところの猛暑のため、より涼しくハナアブが多いであろう松之山の高標高地、天水山で実施されました。去年は天水山では登山口周辺で採集していましたが、今回は初の試みで、天水山の山頂まで登りました。山頂にはチョウやハエ、ハチなどの主に飛翔して移動する昆虫が集まる習性があるためです。約200mの高低差をゆっくり虫を探しながら登り、山頂では時間を多めにとって採集しました。一番期待していた山頂では思ったほどハナアブはいませんでしたが、全体としては素晴らしい成果が得られました。

今回は9種が採集され、そのうちの4種(キオビハラボソヒラタアブ、クロハラハナダカチビハナアブ、オオモモブトハナアブ、スズキフタモンハナアブ)は松之山未記録種でした。全体的にハナアブ科の個体数は少ないように思えましたが、採集された種の約半分が松之山未記録種という過去にないほど新発見に恵まれた回となりました。数年間調べ続けても次々と見つかる新発見種。自然の奥深さを感じずにはいられません。

① ホソヒラタアブ 4メス
② マダラコシボソハナアブ 1オス
③ キオビハラボソヒラタアブ(松之山未記録) 1オス
④ ヨコジマオオヒラタアブ 2オス
⑤ オオハナアブ 1オス
⑥ ミナミヒメヒラタアブ 1オス
⑦ クロハラハナダカチビハナアブ(松之山未記録) 1オス
⑧ オオモモブトハナアブ(松之山未記録) 1オス
⑨ スズキフタモンハナアブ(松之山未記録) 1オス

③キオビハラボソヒラタブは、私が初めて認識した種でした。魚沼市で採集記録があります。⑦クロハラハナダカチビハナアブは、本種かその近縁種と思われるメスがキョロロ周辺で採集されていましたが、オスでないと正確な同定ができませんでした。今回オスが採集されたことにより、種を確定することができました。形が一般的なハナアブらしくなく小型であるため、見逃しやすい種だと思われます。県内の記録は文献記録のみでは確定できないため、その記録の元となった標本を調査するしかありません。⑧オオモモブトハナアブは今回最も迫力のある種でした。名前の通り、後ろの脚のももの部分が異常に肥大します。糸魚川市から記録があります。⑨スズキフタモンハナアブは木の幹にとまっていることも多く、なかなか見つけづらい種かもしれません。三条市、魚沼市から記録があります。

今回はキョロロのインターン生1名と一般参加者6名の方々にご協力いただきました。標高が870~1088 mとやや涼しめとはいえ蒸し暑い中、山道を登りながら、精力的に調査をしていただきました。その努力が実り、今回の素晴らしい成果につながったのだと思います。次回のハナアブしらべは9月16日(土)に行われます。春~初夏の間に次いで最も多様性が高くなる時期ですので、ぜひ次回もご期待ください。皆様のご参加をお待ちしております。